開けてくれ

2015-11-10_161653

A子とB男、C子とD男の2組のカップルが、夏休みを利用して一緒に旅行をすることにした。

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B男は仕事の都合で出発が遅れそうとのことなので、A子はC子とともにD男の運転する車に乗り込み、先に目的地のホテルへと向かう。

道中、A子はC子やD男と他愛のない話をして盛り上がっていたのだが、車が山道に差し掛かった頃に急に睡魔に襲われ、深い眠りに落ちていった。

A子が目覚めると、そこはどうやらホテルの一室。

知らない間に目的地に着いてしまったらしい。

辺りを見まわすと深刻な表情のC子とD男が自分のことを見つめている。

D男は重々しく口を開いた。

「目が覚めたかい?実は…とても残念な知らせがあるんだ。

どうか心を落ちつけて、ショックを受けないようにして欲しい。

さっき地元の病院から電話があった。

B男はここに向かう途中に崖から転落して病院に運び込まれ…さっき息を引き取ったそうだ」

あまりに突然の知らせ。

A子は驚きで頭の中が真っ白になり、「嘘でしょ…」とだけ尋ねるのがやっとであった。

「私たちも嘘であって欲しいとどんなに願ったか。でも、これは事実なのよ」

C子が涙ながらにA子に語った。

もう夜も遅かったため病院へは明日行くことにし、その日はみんな早めに眠りにつくことに決まる。

A子があまりに大きなショックを受けているようであったため、C子もD男も今日は一晩中A子の側にいると約束をした。

その日の夜遅く。

A子が一睡もできぬままに過ごしていると、

「ズリッ、ズリッ」

廊下から何かを引きずるような音が聞こえてきた。

音はだんだんA子たちがいる部屋に近づいてくる。

やがて、音が扉のすぐ前まで迫り

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「ドン、ドン」

ドアを誰かがノックする音、そして聞き覚えのある声が響いてきた。

「A子、A子!頼むから返事をしてくれ」この声は…B男だ!

A子は起き上がり扉に駆け寄ろうとしたが、誰かに手を掴まれてそれを阻まれる。

見ると厳しい表情のD男がしっかりとA子の手を握って離さない。

C子も不安そうな表情でA子を見つめている。

二人ともA子同様、眠れぬ夜を過ごしていたのだ。

D男が強い口調でA子に言った。

「A子、行っちゃだめだ。B男はきっと君を迎えに来たんだ。もし扉を開けたら、君まで死んでしまう!」

それでも扉の方へ行こうとするA子に向かい、C子も涙ながらに訴えた。

「ダメよ、A子。行ったらもう戻れないわ。B男はもう私たちと同じ世界の人間じゃないの。」

躊躇するA子。

その時、再び強く扉が叩かれた。

「頼む、A子。お願いだ…開けてくれ。俺は、俺はおまえなしじゃダメなんだ。お願いだ、A子。お願いだ…」

A子は二人を振り払い、涙ながらにこう言った。

「ごめん。二人とも、ごめん。

私もB夫なしじゃ生きていけない。B男がいない世界で生きるぐらいなら、B男と一緒に向こうの世界へ…」

A子は扉に駆け寄ると鍵を外し、力いっぱいに扉を押し開けた。

まばゆい光が部屋の中に溢れた…

「A子、お願いだ。開けてくれ。目を開けてくれ…」

B男の声がすぐ近くで響いている。

A子は目を開き辺りを見まわした。

そこは病院の一室。

どうやらA子は病室のベッドに寝ているらしい。

A子の目の前にはB男の顔が、涙で目を真っ赤にしたB男の顔が見える。

「A子…」

B男はそれだけをやっと口に出すと、A子をしっかりと抱きしめた。

聞くとA子たちを乗せた車はホテルへ向かう途中に崖から転落。

A子はすぐに病院に運び込まれたが、一晩の間生死の境をさまよっていたらしい。

「それから…C子とD男は死んだよ。病院に運び込まれた時には、もう手遅れだった」

B男は言いにくそうにそれだけをA子に告げた。

 

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信じるか信じないかは貴方次第。

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